CUUN 2021年2月号「花粉症」
こんにちは。獣医師の佐々木将雄です。暦の上では3日頃に節分、4日頃には「立春」を迎え、春が始まりますが、2月は、実際には一年の中で寒さが最も厳しく、雪も多い季節です。そんな中、春の植物が咲き始め、東風が吹くなど、少しずつ訪れる春の気配に嬉しさも感じます。ペット達も早く外に出て遊べることを期待していることでしょう。
今回は愛犬「いちご」ちゃん(13歳女の子)の飼い主様から「アルピニアの商品説明を読んだら、いろんなところに効きそうだったので、シニアないちごちゃんのお腹にスプレーしたついでに、顔周り・肉球・痒がっていた腕にも使用していました。3日ぐらいでお腹のぶつぶつがおさまり始めたのですが、ついでに気になっていた鼻水が止まってしまいました!昨年から花粉症、アレルギーの疑いで、飲み薬を処方されても効かなかったので、本当にビックリして、それから、毎日いろんな場所にシュッとスプレーしています!」とうれしいご報告を頂きました。2月ごろから花粉の飛散が始まりますので、今回は、くしゃみ、鼻水、目の痒み、皮膚炎、といった花粉症の症状について詳しく説明させて頂きます。
【動物の花粉症はどんな症状】
花粉症に悩まされるのは人間だけではありません。動物にも花粉症はあり、多くの動物病院で治療されていますが、人間でよく見られる、くしゃみ、鼻水、といった症状は病気の進行が強い時にしか出現しません。人間の場合は鼻や目の粘膜に、アレルギー反応に関与しているIgEという抗体が肥満細胞と結合して、花粉などの異物の侵入を待ち構えて存在しています。そこに、自分の体質に合わない花粉が付着すると、肥満細胞からヒスタミンやセロトニンといった炎症物質が放出され、その付近の粘膜が刺激を受けてくしゃみや鼻水などの炎症症状が発現します。しかし、動物の花粉症の場合、人間のような症状が出にくいと言われています。それは鼻の粘膜に肥満細胞の分布が少ないためアレルギー反応が出現しにくくなっているからです。動物は嗅覚がすぐれているため、いろんな場所や物の臭いをかぐ習性があります。それだけ多くの物質が鼻から吸引され、粘膜が過剰反応しない仕組みになっているのではないかと考えられています。
【ペットも花粉症はくしゃみより皮膚炎が多い】
人間の花粉症は、くしゃみや鼻水や目のかゆみなどの症状を引き起こしますが、ペットの場合の多くは、皮膚や耳の発赤や痒みなどの「皮膚炎の症状(アレルギー性皮膚炎)」として発症する事が多いのです。犬種別では、柴犬、フレンチブルドック、プードル、シーズー、テリア種、レトリバー系、が多いとされていますが、当院ではほとんどの犬種で花粉症症状が確認されています。
具体的な症状は、軽症の場合は手足を舐める舐性皮膚炎や外耳炎、皮膚の湿疹や発赤が目や口の周り、首や脇の下に起こり、後ろ足で掻いたり舐めたりして脱毛を起こしたりします。稀に強く掻き壊して二次的に化膿性皮膚炎を併発して、長期的な治療を受けなければならないこともあります。
花粉によるアレルギー性皮膚炎は、その季節ごとにに生息する植物に影響を受けるため、1年間を通じて注意が必要となります。また、草木から放出される花粉の量はその年の温度や気温にも影響を受けるため、毎年の気象状況によって花粉症の症状に差が出ることも認められていますので、どの花粉がアレルギーの対象になるのかを知るとこが必要になります。
【花粉症のアレルゲンを特定できる血液検査があります】
動物病院で「花粉症」と診断された場合、多くは花粉症の疑いという仮診断となります。確定診断を出すためには、どの草木の花粉にアレルギーがあるのかを血液検査で調べる必要があります。アレルギー疾患のある動物はアレルゲン(花粉、ウイルス、細菌、カビなど)に対して抗原特異的免疫グロブリン抗体(IgE抗体)を産生します。これが細胞内から痒みや炎症を起こす物質を放出して皮膚炎を発症させることになります。
SPOT TEST血液検査(スペクトラムラボジャパン株式会社)は、IgEを測定することで、92種類のアレルゲン(花粉や植物、各種菌など)に反応があるかを検査をしてくれます。 ペットの身体にアレルギーを起こさせる草木の名前を知る確定検査となるため、そのような場所に散歩に連れて行かなくてすむようになり、花粉症を可能な限り予防することにもなります。この検査は花粉以外のアレルゲンを知るために非常に有効な手段になりますので、是非かかりつけの動物病院で検査を受ける事を推奨いたします。
【花粉症の対策】
人間にとってもつらい花粉症ですが、ペットにとってもその時期が訪れると同じように憂鬱な病状となります。人間はマスクを付けたりして目や鼻からの花粉の侵入を防ぐ努力をしますが、動物は皮膚炎を考慮して身体に付着しないように注意をしなければなりません。
1、早朝や花粉の飛散が一番多い時間帯の散歩をさける
花粉が多く飛散している早朝や多くなる時間帯を避けて散歩をさせるようにしましょう。
2、散歩から帰ったら花粉を必ず落とします
散歩後はブラッシングをしたり、ぬれたタオルか軽くシャワーをして、散歩中に付着した花粉を除去しましょう。
3、服を着て散歩をしましょう
花粉が直接地肌に付着しないように、服(ウエア―)を着て散歩をすることを推奨します。帰ってきたあとはその服は脱いでから家の中に入るようにして花粉を持ち込まないようにしましょう。
4、顔周りや足の裏には保護する製品を使用する
洋服で保護できない目の周り、足の裏は、花粉を直接皮膚に付着させないように、事前に保護剤の塗布を使用しましょう。帰宅後は、体についた花粉と花粉のついた保護剤を必ず除去して下さい。
5、花粉の飛沫量を知るネットサービスを利用する
花粉の飛沫量や多い時間帯は地域を「花粉ch」などのネットサービスで確認して、お散歩の時間帯などを調整することを推奨します。
【花粉アレルギーの治療】
動物病院では一般的に、西洋医学の治療が処方されます。軽度の場合は目薬や塗布剤です。症状が強い場合は、抗ヒスタミンやステロイド、分子標的薬、抗生剤の注射治療や飲み薬が処方されます。いずれにしても、「予防に勝る治療」はありません。花粉症の罹患を発端に、ほかの物質のアレルギーを獲得してアトピー性皮膚炎に罹患しやすくなるケースもありますので花粉を付着させない保護剤の使用や花粉対策の実施などを強く推奨致します。
【花粉症になりにくい身体を作るには】
最近はアレルギー性皮膚炎には腸内細菌叢と密接な関係があることが分かっています。ただ、弱年齢の時点(人間は1歳までに)で腸内細菌叢はしっかりと決まってしまいますので、単に乳酸菌だけを飲ませても容易に分解されてしまいます。どんなに良い乳酸菌を長年投与しても定着しないのです。最近は自己が持っている細菌叢を活性化する「動物用クレシェーラ アンブロ(乳酸菌発酵製剤)【サンテクレアール株式会社】」や「アルピニア【INSIVO株式会社 アルピニア科学研究所】」が推奨されています。どちらも良質なサプリメントで、日本の動物病院で多くの臨床治療が行われ、多くのデータをエビデンスとして持っています。腸内環境を整えることができ、アレルギーに強い身体を作ることが可能な商品であり、獣医師推奨品としても販売されています。
【皮膚のバリア機能を保ち、花粉症に対抗するには】
そこで今回も「月桃・へちま・温泉混合液」の投与を推奨いたします。月桃は皮膚のバリア機能回復することは以前からお話ししていますが、身体の健康を保つためのアイテムとして多くの作用が期待できます。花粉症対策として、皮膚のケアに使用する場合は、散歩の前に保護剤として塗布したり、散歩後の手足の洗浄あとのケア、そのほかドライシャンプーとしても使用できるのが便利です。腸内環境のケアに使用する場合は、食事や飲み水にスプレーしたり、お口や鼻に直接スプレーして口腔内や鼻腔内の保護、飲むことで腸内細菌叢の調整にも使え、「オール・イン・ONE」としてあらゆるケアが可能な商品になります。身体のいろんな箇所に安心して使用できます。
家族の一員である大切なペットには、治療実績のある安全な製品を日々の皮膚ケアに使用して頂き、病気にならないための体作りに努めて頂きたいと思います。