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循環器…心臓疾患

◆心臓とは循環器系の中心臓器で,血液を送り出すポンプの働きをします。

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僧帽弁閉鎖不全症(MR)

愛犬や愛猫が咳をする、息苦しい、失神するなどの症状がある場合は心臓病の可能性があります。
犬猫の心臓病の中でも発生が多い疾患のひとつに僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)というものがあります。
ここでは、ペットを飼っている飼い主様に身近な病気である僧帽弁閉鎖不全症について解説します。

疾患の症状
僧帽弁閉鎖不全症の主な症状は湿った咳をする呼吸回数が多い胸を大きく動かして呼吸する興奮時や運動時に失神するなどがあげられます。
咳については、咳をするタイミングや頻度も特徴があり、興奮時や運動時だけでなく飲水や食事の時も発生します。
一日中咳をしているなど、咳の頻度が高い場合は病気が進行している可能性があります。
呼吸については、夜間就寝中や安静時に呼吸回数が多い胸を大きく動かして呼吸している場合は、病気が悪化し肺水腫と呼ばれる状態になっている恐れがあります
肺水腫は死に直結するとても厳しい状態のため、迅速な治療が必要になります。
また、興奮時や運動時に失神してしまう場合は、重症である可能性が高いので動物の様子を注意深く観察することが重要です。

診断方法
僧帽弁閉鎖不全症は心臓の病気であるため、様々な検査が必要です。
心臓の詳しい状態をエコー検査、X線検査、心電図検査にて確認して診断をします。
エコー検査では、心臓から体に血液を送るために重要な役割をもつ僧帽弁の働きを確認します。
X線検査では心臓や肺の状態を確認し、心電図検査では心臓の電気刺激から心筋の動きを確認します。
これらの検査や症状から総合的に病気のステージを分類することが、適切な治療をするために重要です。

  

治療方法
僧帽弁閉鎖不全症は外科的治療内科的治療があります。
外科的治療としては、心臓を止めて心臓の代わりに体へ血液を送る人工心肺装置を用いた弁形成術が主体です。
しかし、人工心肺装置は非常に特殊な機械であり術式も複雑であるため、限られた施設でのみ実施されています。
内科的治療としては、心機能の補助と血液循環の改善を目的とした内服薬による治療が主体です。
この治療では、病気の進行を抑制し咳や呼吸状態の症状を改善することを目標としています。
日々の継続的な内服治療が重要となり、内服薬の種類も多く飼い主に大きな負担がかかります。
症状の急性悪化時では、迅速で的確な治療が必要となるため、入院治療となる可能性もあります。

飼い主が気を付けるべき点
僧帽弁閉鎖不全症の犬猫は、突然発症する場合急に症状が悪化する場合があります。
愛犬や愛猫の症状の変化に早く対応できるように、日々の健康管理が重要です。
僧帽弁閉鎖不全症の治療中である場合は、内服薬を継続することで心臓の機能を維持しています。
従って、万が一内服薬が途切れてしまうと、症状が悪化してしまう恐れがあるので、計画的に内服薬を継続することが理想です。
また、興奮や激しい運動により症状が悪化することから、平穏な生活を送ることが望ましいという意見もあります。
気になることがありましたら、当院までご相談ください。

三尖弁閉鎖不全症(TR)

愛犬や愛猫のおなかが膨らんできた、食欲が減っている、息苦しそうにしている、元気がない、などの症状がみられたら三尖弁閉鎖不全症(さんせんべんへいさふぜんしょう)の可能性があります。
心臓病は長期の治療が必要となり管理も複雑な疾患です。
ここでは、犬や猫の三尖弁閉鎖不全症について説明します。

疾患の症状
三尖弁閉鎖不全症の症状は、腹部の膨らみ食欲低下呼吸困難元気消失など様々な症状を示します。
一般的に病気の初期では症状が軽く気付きにくいため、症状が現れ治療を開始する頃には病気が進行している場合が多くみられます。
腹部の膨らみについては、おなかの中に体の水分が漏れ出てしまっている「腹水」とよばれる状態です
症状が進行していくと腹水の量が増加し、他の臓器にも障害を引き起こして食欲低下、呼吸困難、元気消失などの症状を示します。

診断方法
三尖弁閉鎖不全症は心臓の病気であり、診断には様々な検査が必要です。
心臓の状態をエコー検査、X線検査、心電図検査にて詳しく検査をします。
エコー検査では、体を巡った血液を回収し肺で酸素を受け取るために、肺へ血液を送る役割をもつ三尖弁の働きを確認します。
X線検査では心臓の形や肺の状態を確認し、心電図検査では心臓の筋肉の動きをみて心筋の状態を確認します。
これらの検査や症状から病気の状態を総合的に判断することが、適切な治療を行うために重要です。

 

治療方法
三尖弁閉鎖不全症の原因は、先天的な奇形変性などによる三尖弁の形態異常左心不全フィラリア症肺の疾患などの他の病気に起因するものがあります。
他の基礎疾患が病気の原因となっている場合は、基礎疾患の治療を優先して行います。
三尖弁の外科的治療は同じ心臓病である僧帽弁の手術ほど一般的ではなく、内科的治療を選択することが主流です。
治療反応は基礎疾患に左右されることが多く、内科的治療に関しても研究報告が少ないため確立された治療法はありません。
腹水貯留を認め、さらに元気および食欲消失や呼吸困難を示している場合は、おなかに針を刺して腹水を抜く治療をします。
腹水が多量に貯留してしまう症例では、腹水とともにタンパク質も体から出てしまうため栄養不良になる傾向があります。
この場合は、食事やサプリメントからタンパク質やカロリーを効率よく摂取する食事管理も効果的です。

飼い主が気を付けるべき点
三尖弁閉鎖不全症は、病気の初期では症状が非常に軽度であるために気付きにくい傾向があります。
病気が進行する前に発見するためには、動物病院にて定期的に健康診断を受けることが大切です
すでに三尖弁閉鎖不全症を発症していて腹水貯留がある場合は、腹水を抜くことによって症状を緩和することが可能です。
愛犬や愛猫の状態をよく観察し苦しい様子があれば、動物病院の受診をおすすめします。
自宅での食事管理も、動物の栄養状態を維持することに効果的です。
愛犬や愛猫の状態に適した食事管理をしましょう。
気になることがあれば、当院へご相談ください。

大動脈弁閉鎖不全症(AR)

心臓は血液を全身に送り出すポンプの働きをしています。そして心臓には血液が逆流しないよう「弁」という扉のような構造物がいくつかあります。
そのうち、心臓の出口と全身に血液を送り出す大動脈の間にある弁が「大動脈弁」です。大動脈弁閉鎖不全症はこの大動脈弁の閉まりづらくなり、心臓から大動脈に押し出された血液が再び心臓内に逆流してしまう病気です。ここではそんな大動脈弁閉鎖不全症について、症状や診断方法、治療方法などについて説明します。

疾患の症状
大動脈弁閉鎖不全症の症状としては、
・咳が出る
・元気がなくなる
・動きたがらなくなる
・食欲がなくなる
・体重が落ちる
・苦しそうに呼吸をする
などがあげられます。

しかし、初期の段階では症状がほとんどみられないため、これらの症状に気がついたときにはすでに病気がかなり進行しているケースが多くみられます

診断方法
大動脈弁閉鎖不全症は心臓の病気であるため、様々な検査が必要になります。まずは聴診を行い、心雑音の有無や心臓のリズム、肺音などを確認します。
その後、心臓の詳しい状態を確認するため、エコー検査やX線検査、心電図検査を行います。エコー検査では、大動脈弁の働きや血液が逆流しているかどうかなどを、X線検査では心臓や肺の状態を、心電図検査では心臓の電気刺激から心筋の動きを確認します。そしてこれらの検査結果や症状から総合的に診断をくだし、治療方針を決定します。

治療方法
大動脈弁閉鎖不全症の治療方法には外科的治療と内科的治療がありますが、外科的治療を行うことはほとんどなく、基本的には内科的治療を行います。ただし、今のところ大動脈弁閉鎖不全症を「治す」薬は残念ながらありません。そのため、完治を目指すのではなく、進行を遅らせたり症状を緩和したりするための治療を行います。また、症状の程度によっては療法食を使った食事療法を行ったり、呼吸が苦しい場合には酸素療法を行ったりすることもあります。

飼い主が気を付けるべき点
大動脈弁閉鎖不全症は、予防をすることが難しい病気です。
そのため、日頃から愛犬・愛猫の様子をよく観察して、早期発見・早期治療を行うことが重要です

また、健康診断や他の病気の診察時に偶然発見されるケースも珍しくないため、1年に1回は健康診断を受けるようにしましょう。
まとめ
大動脈弁閉鎖不全症は稀な病気ですが、完治や予防が難しい病気でもあります。
病気が進行すると息苦しさから元気や食欲が落ちてしまうため、かわいい我が子の苦しむ姿に胸を痛める飼い主様も少なくありません。
そのため、少しでも早く病気に気づき治療を開始できるよう、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
気になることがありましたら、当院までご相談ください。

肺動脈弁閉鎖不全症(PR)

肺動脈弁閉鎖不全症とは、心臓の右下部分にあたる右心室と、右心室から肺へ血液を送り出す肺動脈との間を隔てている肺動脈弁がうまく閉じず、血液が肺動脈から右心室へ逆流してしまう病気です。
犬や猫では比較的珍しい病気ですが、フィラリア症や動脈管開存症などによる肺高血圧が原因で起こりますが、僧帽弁閉鎖不全症(MR)発症後、年齢の経過とともに発症します
ここでは、肺動脈弁閉鎖不全症について説明します。

疾患の症状
肺動脈弁閉鎖不全症を引き起こしていても、最初はほとんど症状がみられません
症状が現れたとしても少し疲れやすくなったかな?と感じる程度でしょう。

しかし、病気が進行するにつれて次第に
・発咳
・元気や食欲の低下
・運動不耐性(疲れやすくなる)
・呼吸困難
などの症状が現れるようになります。

また、肺高血圧の状態が長く続くとうっ血性右心不全を起こすことがあります。
うっ血性右心不全を起こすと腹水や胸水の貯留、浮腫などの症状もみられるようになります。

診断方法
肺動脈弁閉鎖不全症は心臓の病気であるため、聴診やエコー検査、X線検査、心電図検査などを行って診断します。聴診では心拍数や心雑音の有無、心臓のリズムが一定かどうかなどを、エコー検査では肺動脈弁の動きや血液の流れなど、心臓の内部の状態を確認します。そしてX線検査では心臓の大きさや形などを確認します。また、心電図検査では不整脈がないかどうかなどを確認できます。

治療方法
肺動脈弁の閉鎖不全そのものを治療するわけではなく、原因となっている病気の治療と対症療法を行います
対症療法としては、肺血管を拡張させるために肺血管拡張薬を投与したり、うっ血性心不全に陥っている場合は利尿薬や強心薬を投与したりします。
また、症状に気づいてから初めて動物病院を受診した場合、すでに全身状態があまり良くないケースも多く、そのまま入院をして酸素治療や点滴などをすることもあります。

飼い主が気を付けるべき点
肺動脈弁閉鎖不全症は初期症状がわかりにくい病気です。そのため、定期的に健康診断を受け、なるべく早い段階で病気に気づくことが重要です。また、肺動脈弁閉鎖不全症の原因の一つであるフィラリア症は、予防薬を使うことで感染をほぼ100%予防できます。そのため、毎年忘れずにフィラリア症予防を行いましょう。

まとめ
肺動脈弁閉鎖不全症は初期の段階では目立った症状がないものの、病気が進行すると咳や呼吸困難などの症状が現れます。症状が現れた頃にはかなり病気が進行していることが多いため、定期的に健康診断を受け、早期発見・早期治療を行うことが大切です。何か思い当たる症状がある場合やフィラリア症予防について知りたいなど、何か気になることがあればぜひ当院へご相談ください。

大動脈弁狭窄症(AS)

愛犬および愛猫の呼吸が苦しそう、運動時に疲れやすい、急に倒れてしまう、このような症状は心臓病のひとつである「大動脈弁狭窄症」の可能性があります。
ここでは、大動脈弁狭窄症の症状、診断方法、治療方法、飼い主が気をつけるべき点について説明します。

疾患の症状
大動脈弁狭窄症は、苦しそうに呼吸をする、運動時に疲れやすい、急に倒れてしまう、など様々な症状を引き起こします。一般的に病気の初期では症状を示すことが少
ないとされていますが、動物の成長に伴い症状が悪化する傾向があります
病気が進行し重度になると前兆もなく突然亡くなってしまう場合もあるため、非常に危険な病気です。
小型犬でも高齢になると、弁の硬化が進行して開き難くなることがあり、同様の症状を起こします。

また、遺伝的要因(遺伝的に特定の疾患にかかる可能性が高まっていること)が関係していることから、犬では好発犬種があり、
ニューファンドランド
ブラッドハウンド
ロットワイラー
ボクサー
ゴールデン・レトリーバー
ジャーマン・シェパード・ドッグ
などの大型犬の報告が多くあります。

この病気は幼少期症状が現れにくい特徴があります。
リスクの高い動物では早めに動物病院で心臓の精密検査をすることをおすすめします

診断方法
大動脈弁狭窄症は、心臓から全身へ血液を送る働きをしている大動脈弁の病気です。大動脈弁は心臓内部にあり、この大動脈弁の動きと心臓の機能を心電図検査、X線検査、心エコー検査にて詳しく検査します。心電図検査では心臓の筋肉の動きを確認し、X線検査では心臓の形と肺などの状態を確認します。
心エコー検査では大動脈弁の形と動きを確認し、また他に異常がないか詳しく検査します。
これらの検査から総合的に判断し、正確な体の状態を確認します。

 

治療方法
治療方法は薬物による内科的治療手術やバルーンカテーテルによる外科的治療があります。
いずれにおいても、治療成績は乏しく、効果的な治療は少ないとされています。

症状が重度の場合は、内服薬の使用が症状を緩和する効果がありますが、延命につながる程の効果は期待できません。

一方、症状が進行せず軽症を維持する個体は、長期生存することが多いとされています。早期に病気を発見し経過を観察することで、病気の進行具合を把握し、愛犬愛猫の健康管理をしましょう。

飼い主が気を付けるべき点
大動脈弁狭窄症は遺伝性疾患であるため、前述の大型犬が好発犬種とされています。
これらの犬種では心疾患のリスクが高いことを意識しておくことが大切です。

また、病気の初期は症状を示さず進行してから症状を示すために、早期発見が難しい病気です。
少しでも疑わしい症状などがある場合は、早めに精密検査を受けましょう

まとめ
大動脈弁狭窄症は、犬と猫の先天性心疾患に分類され、生まれつき心臓の機能が弱い病気です。

幼少期は症状が現れづらく病気に気づくことが難しいため、リスクの高い好発犬種では早期に動物病院で心臓の精密検査をすることをおすすめします。小型犬でも高齢になると、弁の硬化が進行して同様の症状を起こすことがありますので注意が必要です。症状が進行せず軽症を維持する個体の予後は良好ですが、重症化してしまった場合の予後は悪く治療成績も乏しいため、早期発見に努めましょう。

肥大型心筋症

愛犬愛猫が苦しそうに呼吸をする、突然倒れてしまう、歩けなくなった、などの症状を示したら、心臓病のひとつである「肥大型心筋症」の可能性があります。

ここでは、猫に多くみられる肥大型心筋症の症状、診断方法、治療方法、飼い主が気をつけるべき点について説明します。

疾患の症状
肥大型心筋症は猫に多くみられ、遺伝的素因もあることから
◆メイン・クーン
◆ラグドール
◆スフィンクス
◆アメリカンショートヘア
◆ペルシャ
◆ノルウェージャン・フォレスト・キャット
などの純血種に好発することが知られています。

特にラグドール、メイン・クーン、スフィンクスは1際から2歳までの若齢時に発症し、性別はオスに多い傾向があります

肥大型心筋症の猫の多くは無症状ですが、病気が進行し心不全の症状を示すようになると呼吸困難、頻呼吸、虚脱、失神などの症状を示します
また、心臓で作られた血栓が動脈に詰まってしまう動脈血栓塞栓症も併発しやすい傾向があり、発生すると後肢の不全麻痺や肺血栓塞栓症を生じます

診断方法
肥大型心筋症は心筋壁が肥厚することで、心機能が低下する病気です。
原因は様々で、遺伝的要因や全身性疾患が背景に潜んでいる場合あるため詳しい検査が必要です
この病気の診断に必要な検査は心電図検査、X線検査、心エコー検査、血液検査があります。心電図検査では不整脈、X線検査では心拡大、肺水腫、胸水などを認める場合があります。心エコー検査では、心筋の厚さと動き、その他心臓の弁や血流の様子を詳しく検査します。
また、血液検査は体の状態を判断するために重要な検査です。
猫では甲状腺機能亢進症や慢性腎不全などが背景にある場合もあり、病気を正確に把握するためには様々な検査から総合的に判断する必要があります。

治療方法
肥大型心筋症の治療法は、基本的に薬剤による内科的治療です。
無症状であっても、検査によって左房拡大が認められる場合には左心不全のみならず血栓症のリスクもあることから、血栓予防治療が必要です。心不全の症状を示している場合は、状態が非常に不安定であるため慎重に治療を行います。また、食欲不振と嘔吐は動物の体力を消耗させるため、優先して治療が行われます。低塩分食を使用した食事療法は、胸水や腹水を改善する可能性があり、食事療法も有効な治療法です。

飼い主が気をつけるべき点
肥大型心筋症は猫に多く、基本的に無症状であれば予後は良好ですが、近年、予後が悪くなる要因として心不全や血栓症の症状がある、左房拡大があること、が報告されています。猫のリスクの高い品種は、早期発見のために若齢のうちから心臓の検査を受けることをおすすめします。
また、病気が進行し心不全の症状を示している場合は、状態が不安定なので慎重に扱いましょう。

まとめ
肥大型心筋症は猫によく見られる心臓病です。
遺伝的素因が原因のひとつであるため前述の純血種である場合は特に気をつけましょう。

肥大型心筋症の猫の多くは初期症状が見られず無症状ですが、病気が進行すると心不全の症状を示すようになり、呼吸困難、頻呼吸、虚脱、失神などの症状を示します。
猫ちゃんの健康を守るためにも定期的な健康診断から早期発見・早期治療を行えるようにしましょう。
愛犬愛猫に気になることがあれば、当院までご相談ください。

フィラリア症

フィラリア症は、蚊が媒介する犬と猫の感染症です。
蚊の生息地域である日本では、感染に対する注意が必要な感染症のひとつです。

感染したフィラリアは体内で成長して成虫となり数を増やしていきます。
成虫になったフィラリアは肺動脈や心臓に寄生し、心臓の動きを弱らせたり血管を詰まらせたりします。
こうなるとさまざまな症状を起こし、最終的には亡くなってしまうこともあります。

ここでは、そんなとても身近な病気である犬と猫のフィラリア症の症状、診断方法、治療方法、飼い主が気をつけるべき点について説明します。

疾患の症状
犬と猫のフィラリア症は、蚊の生息する地域に感染の流行がみられます。
現在は、フィラリア予防の普及により都市圏ではほとんど感染がみられませんが、地域によってはいまだに存在します。

フィラリアは犬に感染しやすい傾向がありますが、まれに猫も感染することがあります
犬のフィラリア症の症状は、定期的な動物病院の検査で発見された場合、多くは無症状ですが、日常的に動物病院へかかる習慣のない犬で発見された場合は、進行した症状を示していることが多くみられます。
主な症状は、疲労息切れ呼吸困難失神発咳喀血(かっけつ:咳とともに血液が吐き出されること)、体重減少腹水などがあげられます。

猫のフィラリア症は、抵抗力を持つ宿主であるため、犬に比較して感染率は低いものの、感染した場合は犬よりも重度の症状を示す場合があります
症状は多様であり、半数以上は呼吸器症状がみられ、とくに呼吸困難あるいは発作性の発咳などが多くみられます
その他の症状は、元気消失、食欲不振、嘔吐、失神、神経症状などがみられ、突然死を起こすこともある危険な病気です。

診断方法
一般的な犬におけるフィラリア症の検査は、成虫抗原の検査キットや循環血液中のフィラリア成虫の幼虫であるミクロフィラリアの確認で診断されます。
検査キットは感染後約7ヶ月経過してから検出可能であるため、検査は感染開始期から7ヶ月経過してから行うことが推奨されています。
その他、X線検査、心電図検査、心エコー検査、血液検査で体の状態と虫体を詳しく確認します。

猫におけるフィラリア症の検査は、犬に比べて難しく感染を確認することが困難です。
このため、猫のフィラリア症の感染を証明するためには、抗体検査、抗原検査、X線検査、心エコー検査などの複数の検査を繰り返し行うことが必要です。

治療方法
フィラリア症の治療法は犬と猫で大きく異なります。

犬のフィラリア症の治療法は、症状と検査所見から分類されます。
無症状もしくは中等度の症状を示す場合は、治療反応は良好ですが、重度の症状を示す場合、治療反応は乏しく予後は不良です

フィラリア症の一般的な治療法は、寄生しているフィラリア成虫を薬剤を使うことで弱体化させ寿命を迎えるのを待ちます
しかし、この方法は数ヶ月から数年と時間がかかるため、時間的余裕のある軽症例で適しています。
また、フィラリア成虫の寄生が多い場合は、外科的虫体摘出も選択されます。

一方、猫のフィラリア症の治療法は、犬で行われているようなフィラリア成虫の駆除は致死的な副反応を起こすため行われません
このため、症状のコントロールを目的とする緩和療法が推奨されています
また、猫は数匹のフィラリア成虫の寄生であっても外科的虫体摘出の効果が高いとされています。

飼い主が気をつけるべき点
フィラリア症は重症例では後遺症の残る疾患であり、軽症例でも治療に時間のかかる病気です。
猫の場合はフィラリアが寄生する可能性は低いものの、犬では高確率に寄生します。

この病気は、蚊によって媒介される病気であるため、駆虫薬によって予防することが可能です。
毎年欠かさず予防することで発症を抑えられるため、継続的な予防が重要です
予防期間は蚊が出はじめてから1ヶ月後から、蚊がみられなくなってから1ヶ月後までが一般的です。
途中で予防することをやめてしまうと、フィラリアが成長してしまうリスクがあるため最後までしっかり続けるようにしましょう。

また、予防薬はとても安全性の高い薬ですが、ミクロフィラリアが血液中にいる場合に予防を開始してしまうと強いショック症状を起こすことがあります。
初めてフィラリア予防をするときやシーズン初めに予防を開始する前には、必ず検査をして感染がないか確認するようにしましょう。

万が一、発症した場合も、症状が軽度である場合は内科的治療法に反応しやすく予後は良好ですが、病気が進行し症状が重度である場合は完治が難しく予後は不良です。
動物病院で定期的に検診をすることで、早期に発見し治療を開始することが可能です。
年に一度、ワクチンなどの予防の時期に定期健診を受けましょう。

愛犬愛猫に気になることがあれば、当院までご相談ください。