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CUUN 2020年8月号「涙やけ」

こんにちは。獣医師の佐々木将雄です。新型コロナウイルスの影響による外出制限が実施されたことで、私たちの生活スタイルも変わり、愛犬と一緒に過ごす気持ちにも変化が見受けられます。ペットに寄り添う時間が増え、お互いの関係を深めることで、今まで以上に愛情が湧いたり、たくさんの癒しをもらったり…。また普段、その子の1日の動きを知る機会はありませんが、時間の共有によって新たな性格や行動を目の当たりにして驚いている飼い主様も!日々の小さな気づきや嬉しい気持ちは、お互いプラスになるので、これからも継続して欲しいです。

今回のお悩みは、Babyちゃんの飼い主様から目の周りの「涙やけ」です。これから高温多湿の夏の時期に「涙やけ」で注意しなければならないことは何か?
Babyちゃんのように白い毛色の愛犬の場合、目の周りの赤茶色の変色は目立ってしまうため、昔からホウ酸で拭いたり、すぐに乾かしたりと、いろんなケアが試されてきました。そこで、最近はどんな予防やケアが注目されているのかをお伝えいたします。

【涙やけが起きる原因】
動物の涙の量は、人間の約3倍と言われています。涙は目から涙管を通って鼻腔へ流れているため、通常は目の周りに溢れでることはありません。ところが、いくつかの原因によって涙が溢れでて周囲の被毛に付着し、涙の成分や増殖した細菌やカビによって赤褐色に酸化・変色してしまうことを「涙やけ」と呼んでいます。
「涙やけ」ができる原因は①毛やごみなどの異物が混入する物理的要因②鼻が短い短頭種などの種類や先天的に鼻涙管が(びるいかん)細く涙が通りにくい③花粉症や食物アレルギーなどの体質で常に炎症を起こしている④フードやおやつの原料や品質、抗酸化剤や防腐剤などの添加物などが考えられます。

【「涙やけ」と「唾液やけ」があることを知っていましたか?】
「涙と唾液」は、ほとんど同じ成分だということをご存じでしょうか?どちらの成分も、もとは血液から「赤血球と白血球」を取り除いたものが大半を占めており、98%以上の水分とムチンなどの脂質やアルブミンなどの蛋白質、無機物のカルシウム、リン、ナトリウムが含まれた液体になっています。なかでも古くなって壊れた赤血球に含まれるポルフィリン(1)という鉄を含んだ成分がありますが、この物質が被毛に長い時間付着すると、紫外線と反応して酸化し、被毛を赤褐色に変色させてしまうのです。
また人間の場合、唾液に消化酵素が含まれ、よく噛むことで酵素と反応し消化の第一段階を口の中でおこないますが、動物の唾液には消化酵素がありません。動物にとって大量に分泌される唾液の本来の役目は、咀嚼をしなくても口から胃に食べものを運びやすくするためとも言われています。前回の7月号でも、口の中の「細菌」や「歯石」が、口臭につながる話をしましたが、歯石が多くついている動物で、大量の唾液が分泌されれば、更に被毛が酸化し赤褐色に変色しやすくなってしまうことも明らかです。

【涙やけの原因で注目されている「涙膜」と「マイボーム腺」の関係】
角膜表面には「涙膜(るいまく)」という液体の膜があります。この膜は角膜側から外側に向かって、「ムチン層」→「水分(涙)層」→「油分(脂質)層」の3層に分かれており、細菌・カビ・ウイルスの微生物の侵入防止、異物や老廃物の除去、角膜へのミネラルや酸素の補給の役目を担っています。特に大切な層は、一番外側の「油分層」です。この油脂が少なくなると、水分層やムチン層を含んだ涙が目の外側に溢れでてしまいます。
では、この油分層はどこからでているのでしょうか?それは人間でいう「まぶた(眼瞼)」の淵に生えているまつ毛の付近にある「マイボーム腺」から分泌されています。「マイボーム腺」は、まつ毛の生え際に約20~40個も並んでおり、瞬きをするたびに上と下のまぶたが触れ合う圧力によって油脂が分泌されます。この油脂が油膜となって涙膜を保護し涙が蒸発せずに角膜の表面にとどまっていられます。本来、動物は瞬きをほとんどしないため、マイボーム腺からの油脂の分泌は目の健康を左右する大切な要素と言われています。

【マイボーム腺の機能低下の要因で一番多いものは】
マイボーム腺の機能が弱まると、分泌されるはずの油脂が固まり、開口部に白いブツブツ状に詰まってしまいます。これを「マイボーム腺梗塞」と言います。逆さまつ毛が生えやすくなるのも、この症状が原因と言われており、当院でも逆さまつ毛の手術を受ける90%以上の子がこの梗塞を起こしています。また、年齢や持病によっても分泌機能の低下が分かっており、眼瞼(まぶた)の神経障害、ホルモン異常による内分泌疾患、アルレギーや脂漏症による皮膚炎などがあります。また昨今、油っぽい「食事やおやつ」の食べ過ぎが原因となって発症するケースが増えており、ドライアイ(乾燥性角結膜炎)の罹患率の増加にも繋がっています。

【最新の涙やけの予防とケア】
涙を被毛に付着させなければいいことはご理解頂けたと思います。しかし、中には目の周囲の被毛が涙で濡れていても涙やけにならない子もいます。何が違うのでしょうか?それは、涙が付着している部分に「酸化現象」が起こっているかが焦点となります。通常、口から入った薬剤やミネラル成分は涙の中に移行しますが、実は、抗酸化物質の月桃ポリフェノールも同様に口から入ったあと、涙の中に移行することが分かってきました。約3時間で最大濃度となり、その後、徐々に少なくなりますが約12時間は存在しています。
そこで今回も「月桃・へちま・温泉混合液」の投与を推奨いたします。次の2つの方法は、動物病院で実施していますが、ご家庭でもできるのでぜひ試してみてください。
1つ目は『食事の改善』です。油分や脂肪分の多い「食事やおやつ」のブランドチェンジをしたあとに、月桃混合液を食事や飲み水に入れてみてください。天然のポリフェノールが涙の中に到達し、被毛に付着しても酸化・変色の改善に導きます。
2つ目は、最新予防として注目の『温熱パックケア』です。約39℃に(犬の平均体温が38℃のためそれよりも少し高め)温めた保温ジェルパックを目の上に当てて1~2分温めます。そのあと上下のまぶた(眼瞼)を私たちの指で約20回、ゆっくりマッサージのように瞬き(まばたき)させます。1日2回行うことで、まぶたの血流が高まり、マイボーム腺の油脂が固まりにくくなります。大切なことは、この温熱パックの前後に「月桃混合液」をまぶたに塗布することです。月桃成分によって血管拡張、脂肪融解作用となり、マイボーム腺分泌が促されます。それに伴い、油脂がでやすくなり、除菌作用と抗酸化作用が加わることで涙やけの予防につながります。塗布後、その子が嫌がらなければ目の周りを乾燥させてあげることで、更に涙やけになりにくくなります。
人間同様、愛犬の目はとても大切です。治療実績のある安全な製品を日々のアイケアに使い、病気にならないための体作りに努めて頂きたいと考えています。

<参考文献>
(1) Gelatt (ed). Veterinary Ophthalmology. 5th ed. Wiley-Blackwell, Ames, Iowa.

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