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エクソソーム(幹細胞培養上清液)治療
エクソソーム(幹細胞培養上清液)治療
エクソソームとは体の中にある、あらゆる細胞の中で作られ、細胞が放出する小さな細胞外小胞(カプセル状の物質)のことです。
エクソソーム中には、メッセージ物質の役割を担う、たんぱく質やmRNAなど様々な物質が含まれています。
現在、人の分野においても、エクソソームを活かした治療や研究が進んでいます。
今回は、エクソソーム(幹細胞培養上清液)治療についてお伝えします。
エクソソーム(幹細胞培養上清液)治療とは、幹細胞上清液と幹細胞培養上清液の違いについて
細胞外に放出されたエクソソームは、血液を含め広く体液を循環しており、循環するエクソソームを別の細胞が受け取ると、その中に含まれているメッセージ物質の影響を受け、様々な反応を引き起こすことがわかっています。
このエクソソームを多く含んだ「幹細胞培養上清液」は、その可能性が期待されている新しい医療技術です。
幹細胞とは、様々な細胞に分化する能力があり、発生や再生にかかわる細胞のことで有名な「iPS細胞」も幹細胞の一つです。
近年よく耳にする再生医療は、この幹細胞を病気の部分に移植することで、傷ついた組織を修復するという試みです。
幹細胞を生成する際には、「幹細胞上清液」という上澄み液が得られます。
しかし、再生医療にこれらの幹細胞を使用するには採取した分だけでは足りないため、細胞数を増やす培養が行われます。
そして、培養した幹細胞が取り除かれ、その際に余った培養液が「幹細胞培養上清液」です。
エクソソーム(幹細胞培養上清液)治療の効果について
幹細胞はエクソソームをはじめ、サイトカインなど様々な生理活性物質を作り出すため、幹細胞培養上清液にはこれらの物質が豊富に含まれています。
そのため、幹細胞自体の投与は移植免疫の検査を入念にしなければなりませんが、幹細胞培養上清液の投与は細胞が入っていないため、拒絶反応などの自己免疫反応を考えなくて済みます。作用としては、代謝や細胞を活性化させ、損傷した組織の修復を手助けする組織修復作用や抗炎症作用が期待されています。
また、幹細胞培養上清液による治療では、代謝や細胞を活性化させるだけでなく、さまざまなホルモンの分泌を活性化する免疫調整作用もあります。
その他、血管再生・血管新生作用、活性酸素除去作用があるともいわれています。
エクソソーム(幹細胞培養上清液)治療の効果が期待できる疾患について
人の分野では、以下のような疾患への治療効果が報告されており、ペットでも同様の効果が期待されています。
・心不全、肝不全、腎不全、間質性肺炎の改善
・活性酸素除去作用による疲労回復、生活習慣病予防
・障害部位(損傷部位・炎症部位)の治癒促進、疼痛の軽減
・免疫調整作用によるアレルギー疾患や自己免疫疾患の改善
・がん細胞の増殖、転移の抑制
・脳梗塞による脳細胞、椎間板ヘルニアなどによる脊髄や神経細胞の損傷の改善
エクソソーム(幹細胞培養上清液)の治療方法について
通常、他の動物病院でエクソソーム(幹細胞上清液)治療を行う場合には、高額な再生医療細胞培養装置の器械を導入し、ペットから脂肪細胞を採集して、間葉系細胞順化培養上清液を作成します。
しかし、当院では犬や猫の「臍帯(さいたい)」を使用したエクソソーム(順化培養上清液)を「株式会社RMDC」から導入しています。これを犬や猫に使用することで、麻酔をして組織を採取するというペットへの負担を少なくする方法を用いています。
また、ある程度年齢が経過した犬や猫から採集した脂肪細胞は、経年劣化した細胞のエクソソームが培養されてしまいます。
その点、当院の上清液は0歳の若い動物の臍帯細胞(ウォートンジェリー)を使用しており、より顕著な効果が期待出来ます。
幹細胞培養上清液は、点滴、局所注射、関節内注射、外用療法などさまざまな投与方法があります。
まとめ
今回は、エクソソーム(幹細胞培養上清液)治療についてお伝えしました。
当院では、「株式会社RMDC」と再生医療の共同臨床治療の研究を行っております。
この記事で、エクソソーム治療を知っていただき、少しでも治療の選択肢にしていただけたらと思います。
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